この花が咲くと、気分はもう春…。でも私の住むカナダブリティッシュコロンビア州は、春まじかのような暖かさの後、急にガクンと気温が下がった。マイナス15から20度の日が何日か続くと、湖も川も凍る。

 

今週もガタガタロギングロードをはるばる2時間、ファーストネーションの村へ保育園の仕事に向かった。

地元のエルダーで、子どもたちに自分達のファーストネーションの文化を教えてくれてるカールさん。マイナスの気温を利用して、今週は炊飯器サイズの氷の彫刻を3つ作って持ってきた。

お日様の光に輝いて何とも言えない美しさだ。子供たちはカールさんの持ってきたミニノコギリで氷を削ってみたり、前回作った鹿皮のガラガラに砂を詰めて立体の丸い形をつくる作業をしたり…。

大人もやるような本物の仕事には子ども達の真剣さが増す。かたわらではカールさんがドラムを叩いて歌っている。お!私の好きなワイルドマンソングだ。それを聞くたびにもう嬉しくなる。

一緒にいたファーストネーションの友達がこの歌にまつわる話を語ってくれた。彼女は薬草の知識が豊富で、お母さんから聞いた沢山の口承伝承の物語を知っている。


1800年代、舞台はここから車で3時間かかるブリティッシュコロンビア州の中心地、バンクーバーのさらに先にあるリッチモンド。昔この辺りにあった監獄から男が抜け出して、マウントカーリーまで逃げて来た事からはじまる。村の女性をさらい、その女性の父親が2人を追いかけてあちらこちらへの逃走劇。途中男は山の神様から力をもらう儀式を行い、ワイルドマンとなる。一方父親も山の神様から特別な力をもらいなんとか2人を見つけ、ワイルドマンを捕獲してお縄にかけ、カヌーに乗せて運んでいく。

友達は、このワイルドマンソングはパドリングソングなのだ。と言っていた。確かに怪しげながらもリズム良く、腹に力がこもってカヌーをぐいぐい焦げるような歌だ。人々はこの歌を口ずさみながら、カヌーを漕いだのだろうか…。

洋二郎君と私は夏になると毎年シーカヤックで海を漕ぐ。

ブリティッシュコロンビア州の州都は実はバンクーバーではなく、バンクーバー島というバンクーバーからフェリーで2時間のビクトリアところにあるのだか、私と洋二郎君のお気に入りの海はこのバンクーバー島の北西、太平洋に面したトフィーノというエリアだ。

黒潮で繋がったトフィーノには、大震災の時沢山の津波漂流物も流れてきた。もちろん昔だって人や物が流れてきただろう。ファーストネーションの物語には、海から来た姉妹によって村が始まったというものもある。

私はこの海を漕ぐたびに細胞が、魂が、全身で喜ぶのを感じる。どんなに荒波でピンチになっても、この海で洋二郎君とともにまた漕げている事が嬉しく感じるのだ。また…。輪廻転生は信じる信じない人それぞれだし、勝手な思い込みと言われればそれまでだが、私は確信を持ってそう感じる。

友達からワイルドマンソングにまつわる物語を聞くまでは、私がワイルドウーマンみたいだから好きなのかな?と思っていたけど、パドリングソングだから。というのがとても腑に落ちた。洋二郎君に引き寄せられてカナダに移民した私だが、当の洋二郎君をカナダに連れてきたのはカヤックへの情熱だ。今度は、その話も書きたいな。