エコ・フォレスティング

願ってもいない、またとない機会は突然、不意にやってくる。
それは偶然か運命のようにも思えるが、よく考えてみると、点と点が繋がり、線になったことを認識したということなのかもしれない。

大学院の修士論文を書くための参考文献の一つに、「エコ・フォレスティング」があった。

フォレスター(forester)とは、「林業者、森林官、林務官、森林管理者、森林警備(監視)員」あるいは「森林監督官、林務官、森林労働者」とされ、一般的には林業を職業とする者・専門家、森林を管理監督する役人というイメージで用いられる。その仕事の内容は多岐にわたるが、森林を舞台とした経済的営みである林業、すなわちフォレストリー(forestry)はもともと木材の生産が中心的なテーマであった。
しかしながら、近年では、森林の有する多様な環境サービス価値や無数にある森林産品を含めた、総合的なholistic forestry(森林業)の追求が見られるようになってきた。
本書では、このような広義なフォレストリー(forestry)も含むフォレスティング(FORESTING)という新たな考え方を提案する。

2006年に発表されているが、まさに時代を先取りする内容だったのだと思う。
近年、森林環境譲与税が導入されたり、森林サービス産業が林野庁の施策として取り上げられ、森林・林業白書でもSDGsの文脈とともに森林空間利用が位置付けられるなど、その重要性が急激に注目されている。

リトル・トリーへの来訪

執筆者は、柴田晋吾先生(上智大学地球環境学研究科教授)。林野庁、文科省、FAO(国連食糧農業機関)等で勤務し、深海地球探査の国際共同研究プロジェクトIODP(International Ocean Discovery Program)の共同議長としてJAMSTEC(海洋研究開発機構)を含む24カ国の調整を行うなど、経歴に目を見張ってしまう。(深海地域探査にも興味あり・・・)

先日、その柴田先生がリトル・トリーに来てくれた!感激してしまった。
水源管理所へ用事があり道志に訪問した際、Doshi Deer Trailの取り組みに関心があり、奥様と一緒に立ち寄って下さった。生憎、雨模様だったので、トレイルの案内は出来なかったが、自分の取り組みなど熱心に聞いて頂き、話しながらも夢のような感覚だった。

柴田先生の関心は、MTBトレイルをビルドしている民有林に対して、山を購入する、山林所有者に賃借料を払うなど、経済的な対価を支払っているのかというものだった。この点について、僕たちは経済的な対価は支払っていない。

森林経営計画とMTBトレイル

では、どうやっているのか。MTBトレイルを作っている谷相地区を含む、37.24haについて2018年に森林経営計画を樹立したが、そのエリアには10人ほどの山林所有者がいる。2016年から着手した森林経営計画作成の手続き(GPS実測、契約書作成、密度管理等)の中で、皆さんの自宅を訪問し、時には茶の間で一緒に相撲を観戦し、お茶を飲みながら、山のことを話すこともあった。リトル・トリーには山林を購入する資金はないので、山林所有者の経済的負担なく、無償で間伐・搬出をさせてもらう代わりに、トレイルを作り、より多くの人が山に親しめる空間にさせて欲しいという交換条件を提示したのだ。多くの人は喜んでくれた。利用間伐のコストは県の造林補助を活用している。

既に使われていない古道があったため、まず、そこをトレイルとして再生することから始まった。当初、倒木や草で覆われていた古道は今、全区間が整備され徒歩でもMTBでも通行、走行できるようになった。その上で、新設トレイルの作設に取り組んでいる。その道があるお陰で、間伐や搬出が出来るようになった。(重機は入らないけど)

柴田先生は、PES(生態系サービスへの支払い)の専門家であり、森林保全とそれを実現するための資金調達スキームについて知見が深い。自分たちのケースは、木材生産については補助が活用できるが、森林空間利用(MTB)を行うためのコストはツアー費で賄う想定をしており、メンテナンスはとても労力がかかるため、実態は赤字だ。今後、こうした状況を改善できる方法論を柴田先生にも相談させて頂きたいと思っている。

振り返ってみれば、幾つか「点」があった。
柴田先生を紹介して頂いたのは、国立環境研究所の山形先生。その後も上智大学の留学生達を木の駅、薪ボイラーへ案内したり。それらの点が結ばれ、線となった。

冒頭の写真は、お会いしたらサインして頂こうと用意していた本の裏表紙!

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