それにしても枝豆を温室で育てるなんて思ってもみなかった。日本では田んぼの畦に植えられて、痩せ地でも育つなんて言われているのに。やはり温暖なところで育つ作物には、夏でも朝9度の日があったりするカナダの気候は厳しかったわけだ。大根もいつも虫にすぐ食われるのに、温室の大根は虫にも食われず丸々と健康に育った。

収穫したばかりの枝豆とキュウリをいただく。大根もべったら漬けにしたり、味噌汁に入れたり大活躍。

しかし土地、気候、国が違えば作物の成長が変わるのは当たり前だが、数百メートルの差で変わるのにはたまげた。私達夫婦はカナダ人と韓国人のカップルと共同で森を購入し、一緒に川から水を引き、それぞれが開墾し、自分達の家を建てた。私達の土地は日当たり抜群。開墾前は針葉樹が生い茂り、開墾後は砂漠のような有様で、雑草が生え出した時の嬉しかったこと。土地は道路工事の専門家に言わせればゴールドのような完璧な砂石配合具合。水はけバッチリだが保水はイマイチ。

この夏、隣の隣りの村は47度という記録更新の後、山火事で村全部燃えてしまった。我が家のあえて一番熱いところにある温度計。

一方お隣さんの敷地は目と鼻の先なのに広葉樹が多く、春の気配を感じる冬の終わりには、メープルからメープル水をとってお裾分けしてくれる。土地は赤茶色で粘土質。谷筋にあるため溜池をいくつか作って水びたしにならないように調整している。そこに馬を二頭飼っている隣の家から、馬の糞尿水が流れてくるので、水と養分が常に供給され、広葉樹の日陰と土地の保水力で、記録更新の猛暑の中、1ヶ月留守にしても庭はびくともしない…。私の家で一晩スプリンクラーが止まったなら数日で植物達は壊滅的な表情になるというのに…。ラズベリーやプラムはスズナリで、こちらも驚異的。

七月中、お隣さんの庭の世話、と言っても前述のようにほぼ水はかってに行き渡るので、鉢植えの植物に水をあげるくらいだが…をしながら一夏ラズベリーを楽しませていただいた。しかし蚊がすごい。我が家は風が吹き抜けるので、蚊の多い夏でも夜までベランダで過ごせるくらいだが、お隣さんの敷地に行くときは厚地の長袖長ズボンに蚊避けネットが必須。薄手だとその上から刺してくる獰猛ぶりで、ラズベリーをとりながら、私は今蚊の海を泳いでいる。と確信した。隣の芝生は青く見えども、まさに一長一短である。

10数年前に安曇野で出会ったパーマカルチャー。まつわる人もみんな素敵だったなあ。

パーマカルチャーという農法がある。オーストリアの隣にあるタスマニアのビル・モリソンという方が提唱した農法だ。土地の特徴を生かし、動物や家屋を含めた生活全てを持続可能なデザインをする事で、取り巻く環境と調和をとりながら、楽しみながら、動物や植物の恩恵を受けながらハッピーに暮らしていく。というとっても素敵な農法である。お隣さんのご主人はこのパーマカルチャーに入れ込んでコースを取り出した。今、コツコツと全部自分で作ってきた家をようやく建て終わり、畑や庭のデザインに取りかかるところである彼らが1か月のキャンプから帰ってきたら、彼らの土地がいかにパーマカルチャーに適した素晴らしい可能性を秘めた土地であるかを伝えるのが楽しみである。