まさか、自分が受け取れるとは。森にある枝葉や蔓を集めて作られたお守り。Talisman.
綾子さんが制作していることを知って、衝撃を受けた。間伐後、大量に発生するも捨てられてしまう枝葉に、こうして新たな生命を吹き込むことができるとは!アートの持つ可能性と力に感服してしまう。「実は、大切なものは目の前にある」というRawcalsのコンセプトを、象徴しているようだ。

これまで、スギの葉で蒸留水を作ってみたり、精油の可能性を模索してみたり、チャレンジはしてきたが、うまくいかなかった。バイオマスエネルギーの観点では、枝葉の有効利用はいつも課題だった。枝葉が利用できれば、木を無駄なく使い尽くすことが出来る。しかし、かさばる、輸送効率が低い、チップ化しても形状や含水率が管理しずらい、熱量が低い、灰の発生量が多いと、その利用に打開策はなかなか見つからない。そこへ、突如、お守りとして現れた。こんな付加価値の与え方があるなんて・・・!

さらに、今回は綾子さんの依頼もあり、2度、伐採したての枝葉をお届けできた。3度目は、トレイル整備に参加してくれた際に自ら集めてくれた。そうして、この枝葉の発生と由来を自身で見届けることが出来たのも良かった。枝葉がTalismanになるまでの短い物語の中で、終盤に魔法がかけられ、こんな形になった。

山では日常の一部が、事務所の外壁にTalismanを飾るだけで、特別な空間になってしまう。造形的にも美しいし、森のフィトンチッドを集めるという営みも素晴らしい。それだけでなく、このtalismanがギフトであることも好きなところ。

綾子さんは、talismanを外出規制時の東京にいる友人達に贈り、森の持つ浄化機能、免疫機能の象徴として、励ましてきた。すると、その友人達は、それぞれが異なる贈り物を返してくれる。そんな物々交換を通じて、社会が物理的に分断されている状況下に、精神的な「濃厚接触」の機会を作ってきた。

今、自分の中で最も熱いキーワードは「贈与」。貨幣経済の前に物々交換があり、贈与の長い時代があったことから、未来にはさらにその価値が高まる気がしている。物の消費から、コトの消費、シェアリングエコノミーへの変化はそんな兆しのような気がする。消費は一回で終了するが、贈与は人から人へ巡り続ける。巡るものが沢山ある社会は豊かだ。そして、ここにもその豊かさがある。Rawcalsは商品ではなく、贈り物にしたい。

森のフィトンチッドを集めたTalisman (魔除け)
アトリエがある森のフィトンチッドを集めてTalismanに。
山にマウンテンバイクコースを作る
道志村の地元中学生と山に入って、コースを作ったり、みんなで楽しい時間を過ごしました。
魅惑の枝葉
仕事を楽しむ秘訣とは