大好きな白い花がまたさきそうだ。この花の愛らしさだけじゃなくて、小さな一本の枝が、どうやって我が家に来たかを思った時、思い出とともに愛おしくなる。

白い花にはユーコンの友人夫婦の家で出会った。確か夏の終わりだったけど、そこには冬の気配を感じる寒さがあって、そんな中明るい室内で天井まで伸びるトマトの木(もはやそう見えた)や、南国を思わせる星形の愛らしい白とピンクの花と、濃い緑の肉厚の葉。家の中はまるで寒さを忘れるような、あったかい不思議なエネルギーに満ちていた。友人曰く、白い花はハワイから来たのだそう。そう、まさにそんな感じだ。あったかい楽園を思わせる花。

友人夫婦には、南極で出会った。正しくは南極クルーズ船での、カヤックガイドの仕事に行った洋二郎が、ガイドの同僚として出会った。奥さんの方は地質学者として乗船し、乗客に南極の魅力を地質学的観点から紹介する仕事だったらしい。

小さかった白い花は、当時スキーリゾートの町ウィスラーに住んでいた私達が、隣町のペンバートンという、牧場と壮大なカーリー山が印象的な小さな田舎町に越したときにはもう、友達の家にあった親株くらい大きくなっていた。

そしていま、私達はペンバートンからさらに北上したマウントカーリーというカナダファーストネーションの村に移り住んで四年。森を開墾して建てた家に住んでいる。そそり立つような雄大なカーリー山(マウントカーリーと呼ばないと変な感じがする)の足元にあるペンバートンとマウントカーリーの町を挟んで、その反対側から見下ろすような山の中腹にある我が家は、谷が霧に覆われるような日でもお日様が顔を出している。

2株に分けるほど大きくなった白い花は、太陽をたくさん浴びて、今年もまた花を咲かせようとしている。友人達の家に満ちていたあの不思議なエネルギーが、私達の家にも満ちてきたような気がする。