用事を済ませて家に戻ると、水道が凍って断水してたから焦ります。山の麓にあるこのアトリエでは、氷点下になると水道に残った水が凍って断水する。道志村あるある、とは聞いていましたが…
夜20時。当面の飲み水と料理の水は、沢の水を汲んで一晩を凌ぎます。ここが清浄な沢が流れる水源地で、本当によかった。ストーブを焚いて室内をじゅうぶん暖めても水は出ない。ということは、山の水源地から家まで引いているパイプのどこかが凍っている、とわかりました。水道管は地上に露出して外気に晒された箇所が凍るので森に入って凍った箇所を見つけ出して自分で解決しなくては。
翌朝はガスバーナー片手に地上に露出している配水パイプを探して、炎で炙りながら凍結箇所を探して冬の森を歩いていました。凍結場所の判断、頼りは音。バーナーで炙っては触り、移動して炙っては触って進む。熱いパイプを触ると氷の溶ける「パキパキ…」という微かな音が手のひらから伝わって来る。氷が溶けはじめた音の後には、下流へと流はじめる水の音も聞こえる。
静寂の森の中で聞こえる美しい水の音。暖かいパイプの触感。
「インフラとしての森を享受するなら、それを持続可能にするためのメンテナンスもしてください。」
昔から里山に暮らす人たちなら持っている見えない「契約書」が心の中に。そんな一文があるように思います。
手で水の音を聴きながらそんなことを考えていました。NOクラシアンでフィニッシュです。