描く前に、そこに何が見えるかよく見てみなさい。カール・サム

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今週の楽しいティペラ幼稚園では、エルダーのカールさんと伝統的なインディアンドラムを作った。丸い木の枠に、事前に濡らして柔らかくしておいた鹿皮を、ドラムより少し大きめにカットして、周囲に穴を開けていく。次に、鹿の腱で作った紐を通しながら鹿皮をピシッと貼っていく。貼り終わったら、ドラムの裏側の手で持つ部分を編んでドリームキャッチャーにしていくのがカールさん流のドラムだ。子ども達はドリームキャッチャーに通すビーズの色を選んだり、紐を引っ張ったりしてお手伝いした。

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仕上がるとカールさんが、「ドラムに絵を描こう。描く前にドラムの表面を見るんだ。なにが見える?」と言った。

11歳のジュディスちゃん(学校がお休みの火曜日と木曜日に私を手伝ってくれている。)が、タイコの表面の鹿皮のパターンを見て、「熊が爪を研いだ跡みたい。」と言うと、カールさんが、「じゃあ爪跡の下の方に熊の足跡を描こうか。」と言った。

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二日後、ドラムに張った鹿の皮が乾いて、叩くと乾いた良い音がした。「さあ描こう。」とカールさん。「茶色のペイントがいる。」と言われたが、持ち合わせていなかったので、とりあえず手持ちのペイントを全色混ぜて茶色にして手渡した。すると、

「一番手の大きい子は誰だ?」と言ってジェイムス君の手を取り、手のひらにインクをつけて太鼓に押しつけた。今度は次々と子ども達の指をとって太鼓におしつける。最後に「細い筆がいる。」というので渡すと、あっという間に熊の足跡が、完璧な形で、完璧なみんなの結晶として浮かびあがった。

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その頃には子ども達はもう、あたりに散り散りになって遊んでいたが、「タイコの誕生日だから、歌を歌うよ。」と私がいうとみんな集まってきたので、みんなで輪になっていつものウェルカムソングを歌った。

ジュディスちゃんが後でふと、太鼓はまだ0歳だね。と言った。その言葉を聞いて、太鼓が私達の仲間に加わったんだなぁと、心に響いた。

カールさんが、空間から、見えるものとしてアートを紡ぎ出す瞬間を見る時、いつもワクワクする。今回、紡ぎ出す前に、目を凝らしてイメージを捉える瞬間があると知り、それをみんなでやれた事に胸がいっぱいになった。

そしてそれは、頭をひねってイメージを絞り出すんじゃなくて、徹底的にポカンとリラックスしながら、自然に見えてくるものを捉えるだけ。

イメージ、イメージ、イメージが大切だ。

これはブルーハーツ。

僕が培かってきたものは創造力だ。

これは比企洋二郎。

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最初に空想があった。

とは野口晴哉先生。

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創造力は、誰もが持っている。アーティストはその力を使うプロ、彼らは集中力が違う、脇目も振らずに、槍が降ろうが、世間がざわついてようが、自分の創造力に忠実である。

それで良いんだ。そうあるべきなんだと思う。一人一人の人生はアートなんだから、一人一人が、自分の人生の創造に忠実であれば、それでいい。それがいい。そして本当のアートは、ポカンとリラックスした時に、自然に立ち現れてくるので、人生をアートに生きるために私達がすべきなのは、リラックスして、ポカンと、楽しくしている事なんだと思う。

ティペラで、子ども達とエルダーから、毎回一番大切な事を学ばせてもらっている。