私には平日のすみかがある。

そこは、マウントカーリーの我が家の高台から見える山並みの中でも、一番遠くに見える山のそのまた奥にある。

出発点であるマウントカーリー村に流れる川が、村の外れで湖になる。その湖はだんだんまた細くなり川となる。

その川沿いにへばりつくように走っているロギングロード、林業用に一応整えられてはいるけど、ガタガタの未舗装道路を2時間。途中50キロ地点には現地のファーストネーションの言葉でスクーカムチャック(速い瀬)という小さな村がある。天然の温泉があるこの村に洋二郎くんと何度かきた事はあったが、車が壊れないように慎重に運転して着いた先はまさに秘湯!であった。しかし今は通勤途中に通り過ぎる村。

行けども行けども針葉樹の森をそこからさらに30キロほど走ると、川はまた湖に変わる。この湖はまた川となりバンクーバーで海に合流するわけだから、鮭とともに生きるファーストネーションの人達の暮らしが寄り添っているわけだ。さて、私の平日の家はこのマウントカーリー村から80キロの場所にある。

私の子ども達がいる場所。

私はカナダに来て以来保育士として働いてきた。今私の仕事場はこの小さな村にある。私が行く時だけあく仕組みの保育園。

コロ🐱の影響でクリスマス後初めての出勤。気がつけばもう2月。

給食係のフランさんにもらったイーグルの羽で自分と部屋をスマジング(線香のようなもので清める)をして、いつものように子供達を迎える準備。2か月ぶりだけど、みんな変わっていない。子ども達はルーティンをしっかり覚えていて頼もしい。

フランさんの旦那さんのカールさんはファーストネーションのエルダーとして、週に何度か子ども達にドラムやクラフトを教えに来てくれる。久しぶりのカールさんが持ってきたものに大興奮。彼が仕留めた鹿の皮を剥いで、乾燥させるために木の枠に貼ったまま持ってきたのだ。畳2枚分はあろうかという大きさ。どうするのかと思ったら、もうしっかり乾燥しているので、鹿の皮を張っている紐をハサミで子ども達に切らせてくれるのだという。よくわかっていらっしゃる!子ども達、本物の仕事に大興奮。あっという間に皮は木枠から離され、その皮の周りでみんなでドラムを叩いてウェルカムソングを歌った。

翌日、この皮で子ども達といっしょにトラディショナルなアイテムであるガラガラを作る事になった。加工用に水に浸して柔らかくした皮は、初めて触る不思議な質感である。本当に誰かの”皮膚“という感じ。

最初は出来るかな?と思ったけど、子ども達は凄い集中力を見せてくれた。これに砂を詰めて乾かし、乾燥したら砂を出して木の棒に合体させる。

ファーストネーションのコミュニティで働き始めて一年半が過ぎた。今はとにかくまたここに戻って来れたことに感謝。